高潔なる騎士

強欲な男爵から娘を守るため、エローナの父は海のむこうに助けを求めた。
すると、かの地の親戚から返事があり、よい花婿がいるからこの際、一緒にさせてはどうかと言う。
すぐに使いの騎士がやってきて、エローナは彼とともにイングランドに向かうことになった。
故郷を離れ、会ったこともない男性と結婚するなんて――。
旅の間に逃げ出せないかしら。
そう思ったけれど、使いの騎士に見張られて実行できない。
無骨なくせに瞳だけは知的な彼に、いつしか惹かれている自分にエローナは気づいた……。
1793年、マルセイユにほど近い港ではフランス在住の外国人が難民と化し、われ先に脱出せんと埠頭に押しかけていた。
沖合にはイギリスの軍艦が待機し、英国人のリントン一家も接岸する救助艇を待って乗り込もうとした。
が、そのとき人々が殺到して娘のエマだけが取り残された。
船は無情にも遠ざかっていく。
呆然とする彼女の肩を、背後からがっしりとした手がつかんだ。
「行きましょう。
ここにいては危ない」英国人の紳士に言われ、エマは振り返った。
この人は誰? 私をどこへ連れていこうというの?病院に勤務するルネイは担当する患者カレンの息子タグにひと目で心奪われた。
富豪エリオット家の一員で、ハンサムなタグは、少々傲慢だが好感の持てる男性だったのだ。
数年前に男性からのひどい裏切りにあって以来、傷ついた心を抱え、ルネイはひたすら仕事に没頭してきた。
だけどタグのような男性となら、もう一度だけ夢を見てみたい。
誘われるままに食事をし、キスをされると彼女の体は喜びに震えた。
その夜が、思わぬスキャンダルの始まりになるとは想像もしなかった。
オークション会場で、クリスティーンは驚くべき掘り出しものを見つけた。
伝説の女無法者ジェサミン・ゴールデンの遺品――町のどこかに眠る、金塊を見つける手がかりとなる品だ。
だが難なく競り落とせると思った矢先、思わぬ競争相手が現れた。
ジェイク・ソーン! ずっと思いを寄せていたけれど、応えてはくれなかった人……。
競り合ったあげく、遺品はジェイクの手にわたるが、驚いたことに、彼はいたずらっぽい笑みを浮かべてこう告げた。
「僕といっしょに舞踊会に行ってくれれば、これを君にあげよう」ケイシーは就職の面接に出向いた。
大富豪キャリスター家が、秘書を探していると聞いたのだ。
キャリスター家の当主ギルは、ゴージャスな雰囲気を持つ男性でしばしば雑誌の表紙も飾っているらしい。
ケイシーは面接を待つ列に加わった。
だが面接室に入り、机の向こうに座る男性を見て、彼女は凍りついた。
端整で男らしい顔に、嘲るような冷笑を浮かべてこちらを見ている。
ケイシーの耳に、侮辱の言葉が届いた。
「秘書に女性としての魅力はいらないから、君に決めたよ」続きはこちらから⇒ttp://www.ebookjapan.jp/shop/book.asp?sku=60015048